コンビニATMだけじゃない、セブン銀行新規事業担当者が描く新事業構想とは?!

2017.03.23
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コンビニでお金が下ろせたら便利なのに――。そんな顧客の要望に応える形でセブン銀行(当時はアイワイバンク銀行)が生まれたのが2001年のこと。セブン−イレブン・ジャパンから同社に異動した山田 智樹 氏は、社外へのATM(現金預払機)設置などを手がけた後、現在は新規事業を創出する「セブンラボ」の次長を務めています。セブン銀行がどんな新規事業を描いているのか、Digital Innovation Labが聞きました。(インタビュアーは中村 政和=Digital Innovation Lab、文中敬称略)

このままではコンビニATMの会社で終わる

中村:まずはセブン銀行の現状から教えていただけますか。

山田:セブン銀行はATM(現金預払機)の使用手数料によって収益を得ている銀行で、利益の93%は提携する金融機関様からの手数料です。一般的な銀行だと、手数料による利益は13%、残りは貸出業務などによる利益ですから、当社のビジネスモデルはユニークだと言えます。ただ、このままだと、ただのコンビニATMの会社で終わってしまいます。私自身、セブン銀行にはもっとチャンスがあると思いグループの社内公募に自ら手を挙げて移ってきたのです。

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写真1:セブン銀行 セブンラボ次長の山田 智樹 氏

中村:具体的に、どういうチャンスがあると考えられたのですか?

山田:セブン銀行のATMは、銀行の支店の中ではなくコンビニエンスストアの中にあります。食べものがあって雑誌があって、保険も買えて、しかも24時間営業している場所にある機械で、お金が出てくるだけというのは価値が低すぎるのではないか?といったことです。

中村:せっかくコンビニの中にあるのだから、例えば肉まんのクーポンが出てくるとかは考えられそうです。

山田:全然、不思議ではありません。しかし、やっぱり銀行なので、立ち上げ時期からこれまではずっと「信頼を構築するための期間」だったんだと思います。ただひたすらに品質の向上に邁進してきました。ある程度コンビニATMとしての認知が広まったので、今は次のステージにいくタイミングだと思っています。そんな中、社長が「新規事業部」という箱を作ってくれ、既存の延長線上にはない新たな価値創造の先導役を託してくれた訳です。

中村:何をされているんですか?

山田:脱ATMです。これまでの成功体験にしがみつかず、お客様にとって新たな価値創造のためには「ATMをやめる」も辞さずということです。

脱ATMはコンビニの価値の再定義から

中村:ATMをやめるという取り組みについて、具体的に教えてください。

山田:「ATMをやめる」というのは誇張的な表現ですが、今はコンビニ価値の再定義というテーマで、新たなサービスやプラットホームの価値創造に取り組んでいます。そのために、立命館大学や慶応義塾大学と共に共創ワークショップを開催し、様々な価値観をすり合わせて利用者の深層心理に迫る努力をしています。

最初のテーマはATMではなく「身近なコンビニを作り変えよう」でした。レジってこういうものだ、ドリンクの売り場はこういうものだ、といった既成概念に縛られていては面白いものはできません。ゼロベースで考えるために、学生達に「コンビニに期待するところって何?」などをどんどん質問をした訳です。

中村:便利なデバイスを設置してほしいとかでしょうか?

山田:それが違うんです。彼らがコンビニに期待する要素は「人」だって言うんですよ。「従業員が面白かったら行く」って言うんです。今は、ほとんどのことがデジタルでできる時代です。デジタル化の先に何が残るのか。時間も余るし、仕事だって、これまでやってきた作業をしなくてもよくなるんです。この仕事もなくなる、あの仕事もなくなる。でも「じゃあ人を減らせ」ではないんです。仕事が全部なくなり、これだけ余裕ができる。じゃあ「人にしかできないおもしろい接客をしませんか?」ということです。単に雇用がなくなるだけではダメだと思うんですよ。

中村:テクノロジーが人の仕事を奪うのではなく、人にしかできない仕事に専念させてくれるということですね。

地方創生に必要なインフラを支える

山田:そうです。ですので共創ワークショップの次のテーマは「地方創生」です。2016年末から活動していますが、これをしばらく続けようと思っています。

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写真2:セブン銀行の「地方創生」について語る山田 氏

中村:地方創生では、具体的にはどういったことをお考えなのでしょうか?

山田:例えば、ふるさと納税の取扱額が伸びています。ただ地元に返礼品がない地域では姉妹都市から購入しているケースがあります。これでは地域にお金が循環せず本末転倒です。ふるさと納税に代わる、その地域を活性化するためのコンテンツを作らなければなりません。具体的には地域通貨にチャレンジしたいと思っているんです。

中村:地域通貨ですか!

山田:例えば、ふるさと納税の返礼として、寄付額の2倍くらいを地域通貨で渡すんです。でも、それは地域通貨だから、その地域に行かないと使えない。そうすると、お金が地域で回り始めます。1万円寄付したら2万円が地域通貨で返ってきた。そして、そこに旅行したときは普通の旅館よりも少しグレードの高い旅館に泊まれた。それでいいと思うんです。そうなれば、他にもお金が使われるでしょう。

他にも、地域でのボランティア活動の履歴を取るという仕組みも検討しています。ICカードに地域通貨をマイルとして付与するのです。例えば、家族全員で雪国に行って3日間雪かきをします。するとボランティアポイントとして地域通貨がICカードに付与されて、温泉に無料で行けますとかが可能になります。こういう何気ない日常を観光体験にプロデュースしたいんです。雪国ではこんなことやろう、海ではこうやる、過疎地ではこうしようって。地域創生の要は、現地に足を運ぶことです。通貨はそのキッカケです。

中村:旅行会社とも組めそうです。

山田:そう、旅行会社とも組めます。あとはスタートアップ企業とも組みたいですね。「現場を体験しましょう」みたいなスタートアップも増えてきていますから。僕らは場を提供し、地方創生に一緒に取り組む。そういう形の社会貢献をやりたいんです。すべての履歴を追える地域通貨も、今のテクノロジーがあれば実現可能です。

中村:セブン銀行が各地域の通貨を作るのでしょうか?

山田:いえ、発行主体は地方銀行がいいと思っています。地域に根ざしていて、企業や人との関わりがある地方銀行に主役になっていただくべきだと。ただし、地域通貨を発行するためのインフラ負担は大きいので、そこは僕らを含めグループのアセットが生きる。これをどこかの都道府県でやりたいなと考えています。既に、この取り組みに協力してくれる仲間も集まってきています。実現のためには金融にこだわらず異業種との展開もあり得ます。

中村:ATMから地方創生まで幅広いお話をありがとうございました。「我こそは」という地方のスタートアップには、ぜひ名乗りを上げてほしいですね。

山田:そうですね。こちらこそ、ありがとうございました。

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写真3:インタビューを終えて。セブン銀行の山田氏とDigital Innovation Labの中村

<プロフィール>
山田 智樹 氏
セブン銀行 セブンラボ次長。日本旅行にて海外旅行の企画営業の後、セブン-イレブン・ジャパン、セブンドリームドットコム でマルチコピー機やレジを使ったエンタテインメント事業に携わる。現在はセブン銀行で新事業創造に向けたSEEDを探索中。経済産業省が主催した「始動NextInnovator2015」のシリコンバレー派遣メンバー

インタビュアー:中村 政和(Digital Innovation Lab)

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