3泊4日でシリコンバレーを歩く(前編)、eatsa、WeWork、B8teを知っていますか?

2017.01.19
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デジタルビジネスの最前線を見聞する目的で先日、米国のシリコンバレーを訪れてみました。仕事の合間を縫ってのことなので、日程はわずか3泊4日。それでも世界初の無人レストラン「eatsa」など興味をそそられることが多く、刺激的な旅でした。現地に赴くことの大切さを痛感した次第です。筆者のシリコンバレーの旅を、前編と後編に分けて、写真を交えながら報告します。

世界初の無人レストラン「eatsa(イーツァ)」

サンフランシスコ国際空港に到着後は、そのままダウンタウンに向かいました。世界初の無人レストランとして話題の「eatsa(イーツァ)」を体感するためです。ちょうどお昼時だったので結構な賑わいを見せていましたが、当然ながらウェイターもレジ係もいません。ではどう注文し、食事をするのでしょうか?

店内に入るとすぐに注文用のディスプレイ端末が並んでいるので、商品を選んでクレジットカードで決済します(写真1)。ぱっと見ただけでは分かりませんが、端末の中身はiPadのようです。メニューは野菜が多めのボウル8種類とチップスのサイドメニュー、ドリンクというシンプルな構成。言ってみれば“どんぶり定食”ですが、中の具は色々選べます。非常に分かりやすいメニュー構成で、初めてでもスムーズに注文できました。値段はすべて6.95ドル(約830円)です。

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写真1:無人レストラン「eatsa(イーツァ)」の様子。左から右回りに、開放的な雰囲気の店舗外観、iPadにクレジットカード読み取り機がついたオーダー端末、直観的で非常に分かりやいメニュー画面

注文を完了したら、コインロッカーのような棚の前に移動です(写真2)。棚の上側にある電光掲示板に注文した客の名前がリスト表示されるので迷うことはありません。自分の名前を見つけ、しばらく待って棚のドアにも名前が表示されれば、「TAP TWICE」という部分を2回タップすると商品が取り出せます。番号ではなく名前で管理できるのは、クレジットカードをスキャンしているからでしょうけれど、ある種の“おもてなし感”があり、ちょっと嬉しかったです。でも同姓同名の場合は、どうなるのかと考えてしまいました。

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写真2:「eatsa(イーツァ)」での料理の受け取り方。左から右回りに、ロッカー風の商品棚の電光掲示板に名前と調理状況が表示される。注文した商品が出来上がった。商品の帯には名前が印字され「自分のために作ってくれた」感がある

盛り付けはロボットではなく、人が担当しているはずですが、少なくとも表からは店員やスタッフを見かけることはありません。日本にも寿司チェーン店などで、タッチパネルで注文するとレールに乗って運ばれてくるシステムがありますが、無人という面では徹底しています。日本流に慣れた身からすれば、ふと「日本では流行らないだろうな」と思いました。しかし、物心ついた時からITデバイスやインターネットに馴染んでいる「デジタルネイティブ」のミレニアム世代(80〜2000年生まれの人々)には、この方が自然なのかも知れません。

Targetが開設したIoTプラットフォームの実験的ショールーム

デジタルビジネスへの対応では、小売業も変革を急いでいます。創業1902年の老舗のディスカウントチェーンTargetも、そんな1社です。全米に1500店を展開し、ECサイトも運営しています。そんなアメリカを代表する小売チェーンが「IoTプロダクトを実際に体験できる『Target Open House』を開設した」と聞いたので、こちらにも出掛けてみました。

最近では様々なIoT関連製品が登場していますが、それらを体感できる機会は多くありません。特にベンチャー企業が開発した製品はなおさらです。Target Open Houseでは、35種類ものIoT関連製品を手に取って使ってみることができます。店内はディスカウントチェーンのイメージはなく、むしろApple Storeのような雰囲気。生活シーンをイメージした連携デモなど、IoTを身近に感じてもらうための演出もありました。販売を主目的にした店舗というよりは、使い方や家庭環境を提案することで理解を深めてもらう、あるいはIoTベンチャーのショールームとして機能することを目的にしているようでした。

IoT関連のアンテナショップとしては「B8ta」という店もあります(写真3)。起業家や企業が月額料金を支払って、自分たちの製品を店内に陳列してもらいます。Palo AltoにあるApple Storeのそばに2015年12月にオープンした同店は、東京の表参道や青山にある小洒落た雑貨屋さんのようなお店でした。訪れた際は、高萩昭範さんの子供用ウェアラブルデバイスの「Moffバンド」や、米Facebookが買収したVR(仮想現実)用のヘッドアップマウントディスプレイ「OCULUS」、紙に書いた内容がスマートデバイスにそのまま現れる「Neo smartpen」が展示されていました。

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写真3:IoT関連のアンテナショップ「B8ta」。左から右回りに、B8taの入口と展示されていたい「Moffバンド」「Neo smartpen」と「OCULUS」を試す人

人気のコワーキングスペース「WeWork」

製品やサービスの開発・展示などと並行してシリコンバレーに増えているのが、オフィススペースのシェアリングやレンタルです。ニューヨークを拠点に、起業家にオフィススペースをレンタルしているWeWorkが、ここシリコンバレーにも進出しています(写真4)。同社が提供するオフィススペースは現在32カ所。半数がニューヨークですが、ここサンフランシスコ地区のほか、オースティンやポートランド、加トロントのほか、英ロンドンやイスラエルのテルアビブなどにも展開しています。

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写真4:WeWorkがレンタルするオフィススペースの例。左から、オフィスの一部(上)とミーティングスペース、個室スペース、休憩スペース

スペースのシェアリングでは宿泊目的のAirbnbが有名です。Airbnbは基本的に部屋の持ち主と借り主が利用する「市場」として機能しているのに対し、WeWorkは、自らが実際の物件を調達し、貸主となっています。起業からの6年間に調達した資金は3億5500万ドル(約424億円)。米ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、WeWorkの企業価値はオフィスのリース会社としては破格の50億ドル(約6064億円)に達します。文字通りのユニコーン企業(価値10億ドル以上の未上場ベンチャー)の1社ですが、資金の貸し手は、WeWorkに不動産ビジネスの未来を見ているのでしょう。

現在の利用者数は2万3000人。WeWorkの共同創設者であるアダム・ノイマン氏は、「需要は非常に大きい。供給が追いつかない状況だ」と話します。最高生産責任者のカクル・スリヴァスタヴァ氏も「一刻も早く、ウェイティングリスト上のすべての人にワークスペースを提供するのが私の目標だ」と言います。同社は月に3〜5カ所のペースでオフィスを増やしていく計画です。

世界各地の宿を疑似体験できるAirbnbのオフィス

そのシェアリングエコノミーの象徴とも言えるAirbnbのオフィスも尋ねてみました。残念ながらエントランスより先のオフィスは撮影NGでしが、エントランスだけでも創造性を大切にしている社風が分かるのではないでしょうか?会議室となると、世界各国の人気の宿の内装を模倣するという、より凝ったものでした。例えば「バリ」という会議室では、Airbnbで評判の高いインドネシアのバリにある物件と同じイスや壁紙を採用し、さらに配置や装飾も同様にしているという話です。会社を見学するだけで、各国の素晴らしい宿を見て回れるのは、素晴らしい体験でした。

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写真5:Airbnbのエントランス。非常に開放的で、光が差し込み、森の中にいるような雰囲気も楽しめる

訪問中には新サービス「Trip」のローンチもありました。Airbnbで宿泊するだけでなく、現地のツアーを楽しむオプションを追加するサービスです。まずは「体験(Experiences)」「スポット(Places)」「ホーム(Homes)」という3つの主要機能から始め、「フライト(Flights)」と「サービス(Services)」も加える予定とのことです。Airbnbが、宿の予約から旅そのもののサービスに乗り出したことで、既存の旅行業者などとの競合(あるいは協調)が、より活発になることでしょう。

いかがでしたでしょうか。みなさんはこれらの企業やサービスのうち、いくつをご存じでしたでしょうか。後編では、シリコンバレーのスタートアップ企業を対象にしたサポート施設を中心に紹介します。

執筆者:中村 政和(Digital Innovation Lab)

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