中国「独身の日」、アリババの売り上げ約1.9兆円を支えた注目の“数字”

2016.11.24
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みなさんは「11月11日」が何の日か、ご存じでしょうか。日本では「ポッキーの日」「宝石の日」など、多数の記念日が設定されています。そして、お隣中国では「独身の日」とされ、ECサイトでは特別セールが実施されます。2016年の独身の日に何が起こったのか。中国EC最大手のAlibaba(アリババ、阿里巴巴)が公表した“数字”から探ってみましょう。

総売上高1.9兆円、82%はモバイル決済

11月11日は、中国では「光棍(独身)節」や「ダブルイレブン」と呼ばれ、独身者が独身であることを自らがお祝いする日です。そこに9年前から、中国EC最大手のAlibabaがネットセールスを開催するようになり、自身への“ご褒美”をネットで購入するという一大イベントに発展してきました(図1)。もちろん、独身者以外も、この日のセールスで日用品なども購入しています。

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図1:Alibabaの「独身の日(11月11日)」の2016年のロゴ(出所:中国Alibaba)

2016年の独身の日、Alibabaの総売上高は1207億人民元、およそ1.9兆円で、前年から32%も増えました(図2)。日本のEC最大手とされる楽天の年間売上高が2015年度に7100億円強でしたから、1年間のビジネスをたった1日で超えてしまうわけです。この1.9兆円のうち82%に相当する990億元(約1.6兆円)はモバイル端末での決済で、前年より69%増えたそうです。2015年の独身の日のモバイル決済率は68.7%でしたから、モバイル端末での利用が拡大していることが良く分かります。

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図2:2015年の「独身の日(11月11日)」の各種実績(出所:中国Alibaba)

受注した商品は配送しなければなりません。Alibabaほか複数社が出資する物流会社の菜鳥網絡(Cainiao)が受け取った配送指示は、前年比41%増の6.57億件に上りました。2015年は68%増の4.67億件でしたから伸び率は鈍化したことになります(図3)。

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図3:菜鳥網絡のホームページ画面の例

越境取引は235カ国/地域、日本が売上高1位に

グローバル化が進んでいます。越境取引していた国/地域は、前年より3カ所増えて235カ国になりました。Alibabaでの購入者のうちの37%は国際ブランド品を購入しています。中国向けに最も売上高他高かったのは、日本。以下、アメリカ、韓国、オーストラリア、ドイツが続きます。日本のブランドで最も売上高が高かったのは「UNIQLO」。それに、「Panasonic」「Sharp」「Sony」の家電ブランド、そして化粧品の「SK-II」が続きました。

1.9兆円を支えた巨大インフラと最新のARとチャットボット

これだけの取引を処理するためにAlibabaは、どのようなITを活用しているのでしょうか(図4)。まず全体を支えるAlibabaのクラウドサービスである「Aliyun」はピーク時に每秒17.5万件を処理しました。決済処理サービス「Alipay」は同じくピーク時には毎秒12万件の取引を処理しています。またリアルタイムデータ処理プラットフォームである「StreamCompute」は 、この独身の日に3.7兆レコードを扱い、ピーク時には毎秒955.6万レコードを処理しました。

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図4:Alibabaの各種サービスと、それを実現するプラットフォーム(出所:中国Alibaba)

バックエンドだけでなく消費者との接点となるユーザーインタフェースにおいても、2016年は新たな取り組みがなされています。その1つが、AR(拡張現実)技術を使った独身の日専用ゲームの実施です。Alibabaが持つB2C(企業対個人)のためのECサイト「Tmall」で、独身の日のプレイベントとして、10月中旬から前日の11月10日まで、「Pokémon GO」と同じようなゲームを提供しました。

このゲームは、Tmall のキャラクターである“猫”を探すもので、見つければ成功報酬として現金などがもらえます。猫には、提携している企業のブランドが命名されています。5000超のKFC(ケンタッキーフライドチキン)の店舗や、2000超のスターバックス店舗、500超の映画館のほか、大手家電量販店や百貨店、ショッピングモールが対象になりました。期間中に1億以上のユーザーが関連店舗を訪問し、7000万人が合計で17億の猫をキャッチしたようです。

ECサイトでの顧客対応では、AI(人工知能)技術を使ったチャットボットの「阿里小蜜」が活躍しました。顧客対応の95%をこなし、独身の日に対応した顧客問い合わせ数は 632 万件。うち96%超を解決できたとしています。この作業量は、5.2万人のカスタマーセンタースタッフが24時間休みなく働くことに相当するそうです。

物流面でもビッグデータを分析しています。Cainiaoは独自のアルゴリズムでグローバルな物流体制を設計・計画し、最適な配送経路を設定しています。CainiaoのCEOである張氏は「1億以上のオーダーを16時間以内で処理し、そのすべてを2〜3日以内には消費者の元に届けられる」と話しています。

巨大なECビジネスを運営するAlibaba。現在は、1000万以上の売り手と3000以上の物流会社をつなげています。同社のジャック・マー(馬 雲)会長は最近の自社イベントで「ECという言葉は消え、新たな流通ビジネスが始まる」と発言しています(関連記事『Eコマースが消える、中国アリババのマー会長が予測する5つの新産業とは』)。さて2017年の独身の日には、新たにどんな“数字”を生みだすのでしょうか。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)

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