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デジタルが変える「鍵」の役割、スマートロックで広がる家庭向けサービス

2016.08.23
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鍵や錠前は、留守宅や金庫などから大事なモノを盗られないように「確実に閉まる」安全性が何といっても重要です。ですが、鍵が見つからないときなどは逆に、「簡単に開けられる仕組みがあれば良いのに」と思うことがあるはずです。そんなニーズに応えようと、スマートフォンと連動する電子的な鍵として登場したのが「スマートロック」です。個人が購入するケースはそれほど多くはないようですが、最近になってスマートロックを利用した家庭向けのサービスが増えてきました。早速、新しいサービスのいくつかを紹介しましょう。

不動産物件の内見をいつでも可能に:ネクストの「HOME’S PRO」

不動産情報提供サイト「HOME’S」を展開するネクストが、候補物件をいつでも内見できるようにスマートロックを使ったサービスを開始しました。一般に、不動産物件の見学では、仲介役である不動産会社と、大家さんや直接の管理会社との間で、訪問日時を予約したり鍵を持ってきてもらったりしなければなりません。そこで、物件にスマートロックを導入することで鍵の受け渡しに伴う煩わしさを解消しようというわけです(図1)。

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図1:スマートロックを使った内見の流れ

新サービス「HOME’S PRO 内見予約機能」は、HOME’Sに加盟する不動産の管理会社や仲介業者を対象にした「HOME’S PRO」のオプションサービスです。基本的には、仲介会社から管理会社への内見予約を電話やFAXではなく、専用のWebサイト上で済ませてしまうための仕組みです。内見時の注意事項や鍵の受け渡し方法などを事前に登録しておくなど、内見に伴う業務の効率化を図ります。

さらにスマートロックを設置した物件であれば、物理的な鍵をやり取りする必要がなく、管理会社も担当者を派遣しなくても良くなります。スマートフォンに解錠権限が送られてくるので、それを使って物件に入室できるようになります。解錠権限は内見を指定した時間帯だけ有効になるので、セキュリティ面の強化にもつながります。スマートロックの開け閉めにより、実際に内見した時間が記録できるため、データを活用した物件の募集や大家さんへの報告なども容易になります。

家庭の“安心”をスマートロックで守る:NTTドコモの「dリビング」

NTTドコモの「dリビング(旧称:家のあんしんパートナー)」」は、留守中などの部屋の見守りや、水道やガスなどの生活トラブルへの対応などを月額450円(税別)で利用できるサービスです。2016年7月から、掃除や買い物などの家事代行や、子供の世話や送り迎えなどをするシッターの優待サービスを追加したのに伴い、スマートロックを使ったサービス提供の実証実験に乗り出します(図2)。

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図2:dリビングにおけるスマートロックの実証実験の概要

実証実験では、モニター宅にスマートロックとネットワークカメラを設置し、家事代行サービスを利用してもらいます。スマートロックの鍵をスマートフォンで受け渡しすることで、不在時に家事を代行してもらえるほか、物理的な鍵を紛失したり合鍵を作られたりという心配がなくなりますし、入退室の履歴も残ります。ネットワークカメラを使えば作業の様子を外出先からも確認できます。NTTドコモでは、東京23区と日野市、八王子市、多摩市、立川市のエリアで、モニターを50人募集し、2016年9月までの予定で実証実験に取り組んでいます。

民泊拡大に向けスマートロックがインフラに:とまれる、アパマンショップなど

2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催に向けて、注目を集めている事業の1つが“民泊”です。海外からの旅行者急増が期待されますが、逆に不足すると言われているのが宿泊施設。その解消策としての民泊が規制緩和を含めて議論されています。そうした中、民泊に焦点を当てスマートロックの導入を進めるのが、民泊のためのマッチングサービスを手がける「とまれる」や、「アパマン」ブランドを展開するアパマンショップリーシングなどです。

民泊では既に、物理的な鍵の受け渡しによる課題が浮き出してきています。直接、鍵を受け渡す手間がかかること、それを避けようとして郵便箱などに鍵を入れてしまうと、勝手に鍵が取り出されたり合い鍵が作られたりといったことも起こっています。スマートロックであれば、鍵の受け渡しなしで電話やメールで解錠情報を伝えるだけですし、有効期間も設定できます。フロントなどの設備を持たず複数の部屋を貸し出すような施設であれば、鍵のやり取りを含めチェックイン・チェックアウトなどもスムーズに運用できるため、宿泊者にとっても有効なサービスになると期待されます。

鍵をセンサーに見立てたサービス開発が可能に

スマートロックを利用した新しいサービスが増えていますが、スマートロック自体は以前から販売されてきました。日本では2015年ごろから販売されています。主要製品には、フォトシンス製の「Akerun」、ソニー系のQrio(キュリオ)製の「Qrio Smart Lock」、ライナフ製の「NinjaLock」などです。いずれも、特別な工具や工事をすることなく、ドアのサムターン上に直接設置でき、スマートフォンを使って鍵を開けたり閉めたりできます(動画)。

動画:スマートロックの紹介動画。「Qrio Smart Lock」の例

当初は、“便利な鍵”として一般消費者向けに販売されましたが正直、普及しているようには見えません。鍵の紛失や無断複製のリスクを回避できたり、ドアの施錠状態を外出先からも確認できたりといった利便性があるとしても、2万円近い出費は、個人には大きな出費に映ったと考えられます。

それが、上記で紹介したような家庭向けサービスにスマートロックが組み込まれることで、開け閉めするという鍵の機能を超える相乗効果が生まれたといえます。今着目されているのは、スマートロックが持つ時間を指定しての解錠情報のオンライン管理や施錠状態を示すログの管理です。相乗効果を加速されるため、スマートロックのメーカー各社はAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)の整備を図っています。例えばQrioは、同社製品を使ったサービスに開発するためのビジネスAPIや開発環境を提供し始めました。

鍵がデジタル化され、APIによってプログラムによって操作できるようになれば、様々なサービスとの連携が可能になります。実際、米IFTTTが提供する「August」というサービスでは、スマートロックを前提に、蘭フィリプスや独BMW,米GE(General Electric)といった照明や自動車、家電製品のメーカーが種々のサービスを実現させています。家に帰ったら明かりがつく、ドアの施錠を忘れたまま車に乗るとダッシュボードにアラートが出る、鍵を閉めて外出するとオーブンのスイッチが切れるなど、日常生活に役立つ仕掛けです(図3)。

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図3:米IFTTTの「August」によるスマートロックを使った種々のサービス例

こうした仕掛けにおいては、スマートロックは単に既存の鍵を置き換えるだけではなく、鍵が設置された空間に対する一種のセンサーとしての役割を担っていることが分かります。そんな新たな付加価値は、鍵に留まらず、様々なモノのデジタル化においても誕生することでしょう。まずはスマートロックを題材に、私たちの日常を豊かできるサービスの可能性を考えて見ては、いかがでしょうか。

執筆者:國井 裕司(Digital Innovation Lab)、漆畑 慶将(OKメディア)

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