デジタルが実現する“スマートホーム”のこれからと課題(前編)、積水ハウスとLIXILの考え

2017.11.09
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種々の操作を音声で指示できるスマートスピーカー「Amazon Echo」や「Google Home」が日本でも発売されるなど、住宅内にある家電や設備などもネットワークにつながり始めました。デジタルテクノロジーによって和たちの暮らしを快適にするスマートホームは成長分野の1つとして期待されています。住宅や設備、あるいは家電や各種サービスなど、さまざまなプレーヤーが参画するスマートホーム分野で、各社は何に取り組み、どんな課題を抱えているのでしょうか。

スマートホームに取り組む各種のメーカーや関連サービス事業者が一同に介し、意見交換する機会がありました。千葉・幕張で2017年10月5日に開かれた「CEATEC JAPAN 2017」におけるコンファレンス「スマートホームで暮らしが変わる 〜 ハウス/住設機器/家電/サービスのつながり」がそれです。

前編では、家庭環境のICT(情報通信技術)化をテーマに研究している北陸先端科学技術大学院大学教授の丹 康雄 氏と、ハウスメーカーの代表としての積水ハウスの執行役員 技術業務部長 兼 設計システム室長の雨宮 豊 氏、住宅設備・建材メーカー大手であるLIXILのTechnology Research本部システム技術研究所 所長の三原 寛司 氏の講演内容から、住宅を作る側の見方を取り上げます(写真1)。


写真1:左から、北陸先端科学技術大学院大学教授の丹 康雄 氏、積水ハウスの執行役員 技術業務部長 兼 設計システム室長の雨宮 豊 氏、LIXILのTechnology Research本部システム技術研究所 所長の三原 寛司 氏

スマートホームの実現技術は大きく変わっている

丹氏は「今のスマートホームは何が新しいのか」を考えるために、家庭におけるICT利用の歴史を振り返ります。丹氏によれば、家庭のICT化は1970年代後半、マイコンを搭載した家電の登場から始まりました。それが90年代に家電のデジタル化が起こったことから「ECHONET」「HAVI」といった推進フォーラムが結成され、それぞれが接続のための標準(プロトコル)を作ります。ですが“売れる”デジタル家電はなかなか登場しませんでした。

2000年代に入り、TCP/IPを採用した常時接続のインターネットを前提にしたシステム設計が一般化します。「HDMI」や「Zigbee」といった新しいプロトコルも出現しました。2010年代には、スマートグリッドのブームが起こりますが、その矢先に東日本大震災が起こり、日本では「エネルギーマネジメント系に注力し出すようになった」(丹氏)のです。

そのエネルギーマネジメント系が一段落したところで、健康関連機器やセンサーネットワーク、ロボット、新しい機器群を活用したサービスの実現に取り組み始めます。そして今はクラウドやビッグデータ、AIを活用して家庭にもサービスを提供する時代に入りました。

つまり家庭へのサービスの実現手段は、「従来のスタンドアロン型ホームネットワークからASP(アプリケーションサービスプロバイダー)型を経て、現在はプラットフォーム型へと変わってきた」(丹氏)のです。

結果、IoT(モノのインターネット)の構成要素の接続方法も変わりつつあります。「ゲートウェイ配下の機器側で接続を制御するのではなく、クラウドが提供するインタフェースで制御する方法へシフトしている」のです。しかし丹氏は、「これが今のスマートホームだが、本当にこれで良いのかを検討する必要がある」と指摘します。

積水ハウス:住宅は社会の課題解決の中心にある

丹氏の指摘はテクノロジーの観点からのものですが、それを採り入れる住宅メーカーや住宅設備/建材メーカーは、スマートホームをどう考えているのでしょうか。

大手住宅メーカーの1社である積水ハウスは、累積建築戸数は233万戸、2016年度の売上高は2兆円を超えました。経済産業省のスマートホーム実証事業にも協力事業者として参加。東京都内にある賃貸物件3棟の計31戸で、エアコンや照明、空気清浄機、インターホン、スマートフォン、ホームアシスタントを連携した実証実験に取り組んでいます。

同社の基本理念は、社会課題を解決に導く住宅づくり。技術業務部長 兼 設計システム室長の雨宮 氏は、「社会の課題解決の中心に住宅があるととらえている。IoT社会においても住宅が重要なプラットフォームになる」と話します。

そのスマートホームの課題として、実証実験に使われている住宅に雨宮氏自身が住んでいるからこその体験談を次のように語ります。

「例えば、照明はリモコンやスマートフォン用アプリからも操作できるが、壁についているスイッチで操作するほうが便利。リビングに置いてあるスタンドなど、さまざまな機器もスマホ用アプリで制御できるが、それぞれを別々のアプリで制御するため、『これが利用者にとってスマートなのだろうか』と感じる」

しかも機器は、規格や暗号化タイプの違い、機器の相性などから、自動ではつながりません。「生活をデザインし、その生活に合ったスマートな住宅を設計するアプローチが大切だと気付いた」という雨宮氏。住まい手のニーズを実現するために、長期的にサービスを提供でき、住まい手のライフステージに合わせて機能をバージョンアップできる家を提供するためには、「プラットフォーム連携の仕組み作りと必要なデバイスが自然とつながる規格作りが大事になる」と指摘します。

積水ハウスが描くスマートホーム事業の方向性を雨宮氏は、「積水ハウスをプラットフォームに各種デバイスをスマートなUI(ユーザーインタフェース)でコントロールできるようにすることはもちろん、顧客の行動データと積水ハウスが持っている家の情報を活用して新規のサービスを提供する事業者が乗り入れできる共通基盤を整備することも検討している」と語ります。

LIXIL:住まいには人の意思が伝わり人体の一部のようになる

LIXILは、トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が2011年に統合して誕生した企業。サッシや玄関などのエクステリア、お風呂、トイレなどインテリアなど、家を一棟作るのに必要な設備/建材を提供しています。

同社が考えるスマートな住宅設備/建材について、システム技術研究所 所長の三原 寛司 氏は次のように話します。

「例えばエクステリアであれば、宅配ボックスに荷物が届いたことをメールで通知したり、屋内カメラやカーポートカメラの映像をスマホで確認したりという仕組みを提供している。2017年にはカーゲート用通信ユニットを追加し、専用リモコンがなくてもスマホ用アプリからカーゲートを操作可能にした。利用者の困りごとを解決し、より便利で、より安心な暮らしを提案している」

スマートなエクステリアのためのホームネットワークシステムの特長は「3つある」と三原氏は指摘します。第1は、簡単に接続でき簡単に拡張できること。第2は通信距離が100メートルはあること。第3は操作用アプリを無料で提供していることです。

本当に便利な商品の開発に向けLIXILは今、築20年という実際の住まいを使った研究施設に約250個のセンサーを設置し、3つのレベルについて検証しています。レベル1は人への伝達、レベル2は住空間そのものの制御、そしてレベル3は高度な利用です。「いろいろなデータと組み合わせ、より役に立つ住環境の提供を目指す」(三原氏)のが目標です。

LIXILが考えるスマートホームの未来像について三原氏は、「技術が進みITが進んでいくと、住まいには人の意思が伝わり、人体の一部のようになると思う。そのためには、普通の暮らしの中で生活者の変化を読み取ることや、警告・対策すること、操作が不要あるいは簡単な入力で動かせるようになる必要がある。家電メーカーなどと連携し、そうした世界を成し遂げていきたい」と話します。

家自体を作っているメーカーの考え方に対し、そこに入っていく家電メーカーやサービス事業者などは、スマートホームをどう考えているのでしょうか。そこについては後編でお伝えします。

執筆者:中村 仁美(ITジャーナリスト)

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