デジタルが実現する“スマートホーム”のこれからと課題(後編)、シャープとセコム、楽天の考え

2017.11.14
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家電や設備などもネットワークにつながるスマートホーム。デジタルテクノロジーによって私たちの暮らしを快適にするための成長分野の1つとして期待されています。同分野には、住宅や設備、あるいは家電や各種サービスなど、さまざまなプレーヤーが参画します。前編では、住宅メーカーの考えを紹介しました。今回は、家電メーカーやサービス事業者の考えを紹介します。

スマートホームに取り組む各種のメーカーや関連サービス事業者が一同に介し、意見交換する機会がありました。千葉・幕張で2017年10月5日に開かれた「CEATEC JAPAN 2017」におけるコンファレンス「スマートホームで暮らしが変わる 〜 ハウス/住設機器/家電/サービスのつながり」がそれです。

後編では、シャープのIoT通信事業本部 IoTクラウド事業部 事業部長の白石 奈緒樹 氏、セコム顧問の小松崎 常夫 氏、そして楽天の執行役員 楽天技術研究所代表の森 正弥 氏の講演内容から、それぞれの見方を取り上げます(写真1)。


写真1:左から、シャープのIoT通信事業本部 IoTクラウド事業部 事業部長の白石 奈緒樹 氏、セコム顧問の小松崎 常夫 氏、楽天の執行役員 楽天技術研究所代表の森 正弥 氏

シャープ:クラウドで成長するデバイスが必要

シャープのIoT通信事業本部の事業ビジョンは、「人に寄り添うIoT=AIoT」。事業本部長の白石 氏は「IoT機器を通じて人を知り、AI(人工知能)が最適な提案をする、人が主役にスマートライフを実現することだ」と説明します。

同社が目指すスマートホームは、「家の中と外が連携し、離れた家族ともつながることができ、新しいサービスが次々生まれるエコシステム」(白石氏)です。そこでのスマートホーム事業は、(1)家電機器のAIoT化、(2)AIoTサービスの拡充、(3)AIoTプラットフォームの提供の3分野になります。

例えばB2C(Business to Consumer:企業対個人)向けには、「ヘルシオ」などの調理機器や、ヘルシーなレシピを提供するアプリ「COCORO KITCHENアプリ」、料理キットを宅配する「ヘルシオデリ」というサービスを提供しています。B2B(Business to Business:企業間)向けには、自社の家電で培ったAIoTプラットフォームを提供し、他企業が展開する顧客向けサービスを支援しています。

そんなシャープが考えるスマートホームの課題としてい白石氏は次の3つを挙げます。第1の課題は、魅力的なサービスが不足していること。対策として「快適なUI(User Interface:ユーザーインタフェース)を用意し、価値ある情報を安全に提供することで、より利用者にメリットがあるサービスを創出できるのではと考えている」と白石氏は語ります。

第2の課題は、さまざまなスマートホームが乱立していること。「オープンなプラットフォームを構築する必要がある。これができなければ、いくら良いサービスを使っても広がらない」(白石氏)と考えます。

第3の課題は、サービスと機器の時間軸が一致していないこと。「家電製品は10年以上使うが、その間にサービスは変化していく。そこに追従するためにも、クラウドで成長するデバイスが必要になるだろう」(白石氏)とみています。

シャープとしては今後、「機器、サービス、プラットフォームの三位一体により顧客価値を高め、スマートホーム事業を拡大していく」(白石氏)方針です。

セコム:あんしんプラットフォームの構築が不可欠

セコムの経営理念は、「社会システム産業の構築」。すなわち「安全、安心、快適、便利な生活を提供すること」(顧問の小松崎氏)です。この社会システム産業とスマートホームが目指す未来は同じであることから、「セコムは警備会社ではなく、スマートホーム業を展開している会社だ」と小松崎 氏は強調します。

セコムが考えるスマートホームは、「住む人の想いや理由に応える新しい社会システムサービスのプラットフォーム」(小松崎 氏)。同社としては、「社会全体をみながら、一人ひとりの不安や困りごとに対し、きめ細やかな安心を提供する『あんしんプラットフォーム構想』の実現を目指す」(同)と言います。

小松崎 氏は、「スマートホームをイメージすれば、個々のサービスイノベーションのデザインや実行が容易になる。その集積により、さまざまな社会システムサービスの再デザイン/イノベーションが加速され、コミュニティがうまく連携して機能する社会全体の姿がイメージできるようになる。だからこそスマートホームをプラットフォームとしたソーシャルデザインを描くことが大事であり、そのためには社会全体を見据えた技術開発が不可欠になる」と指摘します。

例えば、セコムが現在、国内で交わしているセキュリティ契約の物件数は約200万件。これについて小松崎 氏は、「これらすべてを人手で対応するには約1000万人の警備員が必要になる。ここのテクノロジーにより人の力を増幅することで、2万人による警備が可能になっている」と話します。

監視カメラについても「1200台のカメラを備えた建物を24時間365日監視するには375人が必要だ。だが6000万のセンサーであっても、それらをネットワークで結び、データセンター側でAI(人工知能)を活用すれば、2ケタの人員で監視できる」(同)としています。

セコムにとってのスマートホームは、「家のことを考えるだけではなく、社会そのものを考えること。スマートホームが実現すれば、医療の形態や宅配の仕方なども変わる可能性がある」(小松崎氏)。そのため同社は「いろいろな業界の人たちと協力してスマートホームを進めていきたい」(同)考えです。

楽天:店舗やサービスにおけるスマート体験

楽天と家庭といえば、まずはEコマースが思い浮かびますが、楽天技術研究所所長の森氏は、「楽天は今、小売業者とともに未来の店舗デザインを研究している。そこでのアイデアをスマートホームに還元できるのではと考えている」と話します。

森氏が率いる楽天技術研究所は現在、東京、米ニューヨーク、米ボストン、仏パリ、シンガポールの5カ所に拠点があり、いずれの拠点でも多くの研究員がディープラーニング(深層学習)の研究に関わっています。そのなかで筑波大学とは「未来店舗デザイン研究室」を設け、30人の研究員が「未来の店舗はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用するとどうなるのか」を研究しています。

例えば、事業活動の活性化を支援する仕組みとして、実在の店舗に巨大なデジタルサイネージを設置し、AR(拡張現実)やAIを使ったインタラクティブな購買体験を可能にするサービスを提供しています。コンテンツの一例が、「絶対勝てない『AIじゃんけんサービス』」。対象店舗で楽天モバイルの通話用SIMを契約した顧客が挑戦できるという企画でしたが「思った以上に受けた」(森氏)と言います。

またクラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングに対しては、店舗に社長と乾杯ができるサイネージを展示し、飲む楽しさをいかに味わえるかを伝える仕組みを提供。女性用ファッションサイトのe-zakkamaniaには、画像認識技術を活用し、顧客に合ったファッションをレコメンド(推奨)するサイネージを展開しました。

森氏は、「今後は、複数の拠点をネットワークでつなぎ、他店舗のスタッフともコラボレーションしながら顧客にサービスを提供する仕組みも考えている。こうした仕組みがスマートホームに利用できるのではないか」と話します。

いかがでしたでしょうか。前編では積水ハウスとLIXILという家を作る側の見方を、そして後編では、その家に届けるサービスを考える側の見方を取り上げました。両者に共通するのは、私たちの“暮らし”を考えていること。そこに視点を置けば、スマートハウスを対象にしたビジネスの範囲には制限がないのかもしれません。

執筆者:中村 仁美(ITジャーナリスト)

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