IoT先進企業コマツも採用、サービス化で広がるサブスクリプションモデル

2017.03.09
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IoT(モノのインターネット)に取り組む日本の先進企業といえば建設機械大手のコマツ(小松製作所)が、その代表例でしょう。建機の管理にとどまらず、施工状況までもデジタルで管理する「スマートコンストラクション」を推進しています。そのコマツが2016年末、利用契約や料金徴収のためのサブスクリプション(購読型)モデルの基盤を一新しました。コマツが採用したサブスクリプションモデルには、どんなメリットがあるのでしょうか。

現場の状況を3Dデータ化し工事の進行はクラウドで管理

コマツ(小松製作所)のIoT(モノのインターネット)といえば、「KOMTRAX(コムトラックス)」が有名です。GPS(全地球測位システム)情報と建設機械から得られるデータから、建機の稼働場所や稼働状況を把握できるシステムで2001年から提供されています。建機の保守や省エネ運転といった車両の管理が主な目的でした。KOMTRAXで得られるデータを分析すれば、どこで建設プロジェクトが起こっているかが分かるため、国や地域の経済状況も見えてくると話題になりました。その後には鉱山向け大型建機を管理する「KOMTRAX Plus」も提供しています。

コマツのIoTはさらに進化し、2015年2月からは「スマートコンストラクション」と呼ぶ新サービスを投入しています。これは、建機を使った土木作業自体をデジタル化するもので、施工前の測量から設計、建機による実作業、施工後の検査結果までをデータで管理します。測量には3Dスキャナーやドローンを使って3Dデータを作成。設計情報と組み合わせ、削り取る土の量や必要な建機の台数、プロジェクトの日程なども自動的に算出します。建機自体もコンピューター化が図られ、余計に土を削り取ったり施工面が凸凹になったりしないように制御されます(動画1)。そのため位置情報の精度も高められています。

動画1:コマツの「スマートコンストラクション」の紹介ビデオ

スマートコンストラクションの情報はすべて「KomConnect(コムコネクト)」というクラウド上で管理され、必要な情報はスマートフォンやタブレットから確認できます。つまりスマートコンストラクションは、工事そのものが正確に、かつ適切なコストで実施できるというサービスであり、そこでの建機は施工のためのツールの1つでしかないというわけです。この建機と設計/施工管理を組み合わせたサービス事業を拡大するためにコマツは2016年11月までに、KomConnectをサブスクリプション(購読型)で提供できるように仕組みを整えました。サブスクリプションモデルにすることでコマツは、スマートコンストラクション事業の収益率の向上などを期待しており、同事業の成長戦略を支える重要な要素だとしています。

サービス化でサブスクリプションモデルが広がる

コマツのスマートコンストラクションに限らず、サブスクリプション型のビジネスが増えています。サブスクリプションといえば難しく聞こえるかもしれませんが、端的に言えば使った分だけ料金を徴収する従量課金の仕組みです。クラウドコンピューティングやソフトウェア、あるいは音楽や動画といった分野で起こっている「所有から利用へ」の流れの中での採用が先行しています。いずれも、ネットワーク経由で機能やサービスを提供できる分野です。

この流れが、IoTによってモノに広がり、建機といった特定用途の大型製品に拡大しているわけです。例えば、米GEや英ロールスロイスは航空機用エンジンにサブスクリプションモデルを採り入れています。いずれも、航空会社にエンジンそのものを販売するのではなく、エンジンの使用時間や回転数などに応じて課金します。つまりエンジンが持つ“飛行機を飛ばす”という価値に対して使用料金を徴収しているわけです。航空会社にすれば、購入したエンジンを整備・修理するためのコストはもとより、飛行機を飛ばせない間のコスト負担がなくせるというメリットがあります。

一般にサブスクリプションモデルには、提供者にとっては次のようなメリットがあるとされています。(1)フリートライアルなど導入時の負担の軽減、(2)柔軟な価格戦略、(3)解約率の低減、(4)収益の向上です。一方で、従来のモノを売るビジネスでは、顧客との契約成立がゴールですが、サブスクリプションモデルでは、契約はスタート地点に過ぎません。そこから顧客が離れないよう、継続して価値のあるサービスを提供し続けなければなりません。加えて、顧客それぞれのサービスの利用契約状況をしっかりと管理する必要もあります。メリットの1つである(2)柔軟な価格戦略も複雑な課金体系を管理するという煩雑さにもなります。

サブスクリプションを支援するクラウドサービスも

サブスクリプションモデルが広がっている背景には、同ビジネスを可能にするクラウドサービスの存在もあります。その1つが、米Zuoraが開発・提供するクラウドサービスの「Zuora」です。冒頭で紹介したコマツがサブスクリプションモデルの導入に利用したのも、このZuora。GEなど800社以上が採用しているとしています。

Zuoraが提供するのは、サブスクリプション型のビジネスに関わる業務の全般です(図1)。プライシングや複数サービスの組み合わせ、見積もりとWebでの販売、サブスクリプション契約の管理、請求、料金回収、売上計上処理、レポート/分析です。サービスを利用している顧客と長期的な関係を構築・管理することから、この仕組みをZuoraでは「RBM(Relationship Business Management)」と呼んでいます。実際の顧客管理や会計を管理するCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)と顧客の間に置くことで、各種サービスの追加やビジネスの海外展開などが容易になるとしています。

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図1:Zuoraが提供するサブスクリプションモデルのための機能(出所:Zuora Japan)

使用量を把握できる仕組みが前提に

Zuoraが提供する機能の多くは、課金・徴収の仕組みです。課金・徴収はすべてのビジネスに必要ですが、それだけではサブスクリプションモデルは実現できません。航空機用エンジンの例で示したように、利用状況や利用量に継続して把握できなければなりません。つまりGEやロールスロイス、あるいはコマツといったメーカーは、それぞれの製品(モノ)であるエンジンや建機の稼働状況を把握する仕組みと、それに対応した課金・請求の仕組みを組み合わせることでサブスクリプションモデルを実現しているのです。

最近では、タイヤメーカーの仏ミシュランが、走行距離に応じてタイヤの使用料を課金する「マイレージ・チャージプログラム」を始めていますが、これも定期的にタイヤ装着車の走行距離を調べる仕組みが構築できたからこそ可能になっているのです。この場合、走行距離をオンラインでは把握していないようですが、今後、自動車のネット接続が一般化し、各種データの共有なども可能になれば、車そのものだけでなく、その周辺でも様々なサブスクリプション型ビジネスが成立するようになるかもしれません。モノのコモディティ化(日用品化)が進む中で、消費者ニーズに合わせたサービス化の流れは加速する一方です。サブスクリプション型ビジネスを実現する仕組みの実現は、競争力の原動力として今後さらに重要性が高まっていくことでしょう。

執筆者:國井 裕司(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji)

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