アパート経営から民泊施設経営へ、インベスターズクラウドがIoTで仕掛ける新たな不動産投資

2017.07.06
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2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催に向けた課題の1つが、海外からの来訪者の宿泊施設の確保。その解決策の1つとして期待されるのが、一般の民家や集合住宅の一室を貸し出す「民泊」です。2017年6月9日には民泊サービスの健全な普及を図るために一定のルールを定めた「住宅宿泊事業法案」、いわゆる“民泊新法”が成立しました。そうした中、不動産会社のインベスターズクラウドが、民泊に焦点を当てたデジタルサービスを投入しています。どんなシカケで民泊事業を展開しようとしているのでしょうか。

アパート経営をサポートする「TATERU」を展開してきた

インベスターズクラウドは、不動産に特化したネット型サービスを提供しています。中核サービスは、アパート経営を支援する「TATERU」。対象になる土地をオンラインで紹介し、アパートの建築から賃貸管理までのサービスをワンストップで提供します(図1)。


図1:「TATERU」でのアパート経営の流れ(「TATERU」のホームページより)

候補になる土地は一般に、デベロッパーが仕入れて販売しています。ただデベロッパーの利益が上乗せされるほか、建てられるアパートに制限があったりします。TATERUでは、土地を直接仕入れ、アパートのデザインや建築、運営までを代行します。アパート経営を手がけたい利用者は、TATERUの担当者とチャットなどで話し合いながら、土地の紹介を受け、納得できれば本契約を結びます。その後の業務はTATERUが代行することで、利用者はオーナーとして家賃を受け取れば良いだけになります。

上記の流れでは、オーナーとなる利用者が契約料の全額を自己資金または融資によって用意することになります。インベスターズクラウドでは、これを1口10万円から始められる不動産投資のクラウドファンディング「TATERU FUNDINGも運営しています。ハイリスク・ハイリターンの劣後出資を同社が受け持ち、ファンディング参加者を優先出資者にすることで元本の安全性を高めています。運用資産の評価額が下落しても、同社の元本出資分で補填できる間は出資者の元本は変動しないためです。同社の説明ページによれば、同ファンディングの予想分配率は年5%としています。

TATERUのシカケを使って民泊用の施設を建てる

TATERUとTATERU FUNDINGは、アパート経営に伴う面倒な部分を受け持つサービスとしてスタートしています。ただ少子高齢化が進む中、不動産の空き家率が高まるなど、単にアパートを建てるだけでは十分な入居者を獲得できなくなっており、礼金・敷金なしのほか、家具付きやネット環境付き、入居時のリフォームとったサービス競争も激しくなっています(関連記事『外出先からスマホで家電をコントロール、レオパレス21が賃貸物件で取り組むIoT』)。

そこでインベスターズクラウドが打ち出したのが、アパート経営代行の仕組みをベースに、アパートではなく民泊施設を経営しようという考え方です。長期の賃貸契約を結ぶ居住者ではなく、旅行者などの短期宿泊者のための住居を建てて運用しようというわけです。単純計算ですが、1室を月10万円で貸すより1日1万円で20日貸すほうが収入は上がるとの指摘もあります。

アパートを民泊用に転用するために用意するサービスの1つが、「Robot Home」。同名の子会社(旧社名iApartmentから変更)が提供しています。Robot Homeは、物件をIoT(モノのインタネット)化させるためのサービスです。スーマートフォンを使った鍵の開け閉めを可能にする「SMART LOCK」や、窓の開閉や揺れを検知してアプリに通知する「WINDOW SECURITY」、室内の状態をセンシングし家電などを遠隔操作する「NATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER」、これらを室内で操作するためのタブレット型のゲートウェイ「CENTRAL CONTROLLER」などを用意します(図2)。日常生活に必要な情報を提供する「ロボットコンシェルジュ」のサービスもあります。


図2:「Robot Home」のサービス概念と「CENTRAL CONTROLLER」の画面例(「Robot Home」のホームページより)

さらに民泊の最大の利用者層である海外からの利用者に対応するための新サービス「Trip Phone(旧TATERU Phone)」を2017年4月26日に開始しました。民泊利用者に向けた専用スマホのレンタルサービスで、チャットによるコンシェルジュのほか、翻訳やテザリング、レストランやタクシーなどの予約、音声による観光ガイド、エマージェンシーコールといった機能を持っています(図3)。これらが、英語を含む多言語で展開できるのが特徴で、宿泊者は24時間いつでも、チャットによるコンシェルジュサービスを受けられますし、オーナーにすれば各国語に対応する必要も、コンシェルジュなど宿泊者に対応するための専用の人員を確保する必要もありません。


図3:「Trip Phone(旧TATERU Phone)」の画面例とサービスの概要(「TATERU Phone」のプレスリリースより)

Trip Phoneを提供するのは、子会社のiVacation。iVacationは、サービス展開に当たり、2016年9月から特区民泊経営事業の認定を受けた東京・大田区の物件でTrip Phoneを導入し、宿泊者に提供する実証実験に取り組んできました。

宿泊者とのマッチングを図る「TATERU bnb」も展開

Robot HomeとTrip Phoneによって、賃貸を前提にしたアパートをスマートな民泊環境に変更できても、実際の宿泊者が集まらなければビジネスとしての民泊は成り立ちません。そこでiVacationでは、民泊施設と利用者のマッチングを図るためのサービス「TATERU bnb」も運営しています。物件オーナーはTrip Phoneを使って、民泊施設のサイトへの掲載から予約代行までをiVacationに任せられます。物件情報は、TATERU bnb以外の外国人向け宿泊マッチングサイトにも登録されるため、オーナーは関連業務から開放され、宿泊者の“おもてなし”に注力できるとしています。

こうした各種サービスの拡充に加えてインベスターズクラウドは、民泊関連事業の強化を図っています。IoTを使ったホステル事業を展開するBIJの株式を取得し関連会社にしたり、IoTを活用してリノベーションしたモデルルームをオープンしたりです。デジタルの力で人的コストを抑えながら民泊事業が展開できるのであれば、これまでアパート経営に向かっていた不動産投資の流れを引き込めるかもしれません。

2020年のオリンピック/パラリンピック開催に向けては、オリンピック/パラリンピックのためのデジタル化が進むだけでなく、民泊をはじめとした多くの周辺領域でのデジタル化が進展しそうです。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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