アパレル業界のB2Bサービス「TERMINAL ORDER」、FinTech関連サービス投入や海外進出を目指す

2017.04.13
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Eコマースの進展でファッションアイテムをオンラインで購入することは今や当たり前になっています。単に商品を販売するだけでなく、月額料金で衣類を貸し出すサービスなども登場しています。そうした中で、ファションブランドを持つ企業を対象にしたB2B(企業間)市場が「TERMINAL ORDER」です。「日本で唯一」という同サービスは、どのように誕生し、どんなサービスを提供しようとしているのでしょうか。

アパレル業界における展示会にまつわる業務を改善

TERMINAL ORDERは、アパレル企業が商品の仕入れ/販売のために開いている展示会運営を支援するためのサービスです。展示会は開催準備に多くの手間がかかるだけでなく、開催後もバイヤーからは電子メールやPDFあるいはFAXなど様々な手段で注文が届きます。その注文データは、会計管理システムへ入力するほか、工場への発注システムなどにも入力しなければなりません。入力の手間ひまに加え、手作業による発注ミスにもつながります。こうした受発注作業をオンラインで実行可能にしたのがTERMINAL ORDERです(動画1)。

動画1:「TERMINAL ORDER」の仕組みを紹介するビデオ

同サイトの立ち上げの経緯や今後の展開について、運営会社であるターミナルの代表取締役である瀬戸 恵介 氏が、東京ビッグサイトで2017年2月15日に開かれたイベント「eCommerce expo Tokyo」の基調講演に登壇し説明しました(写真1)。TERMINAL ORDERのそもそものきっかけについて瀬戸氏は「当時、B2B、特にアパレル界隈は遅れており整備できていないという印象だった。ならば、そこに参入しサービスを提供していこうと考えた」と話します。


写真1:「TERMINAL ORDER」の開発経緯や今後について話すターミナル代表取締役の瀬戸 恵介 氏

TERMINAL ORDERのボリュームゾーンは、年商5億円、従業員数が10人ほどの中堅・中小企業。瀬戸氏によれば同規模の会社では「展示会前後は本来の業務とは全く別に全従業員が深夜まで、その準備と注文の集計作業に追われている」のが一般的です。そこにTERMINAL ORDERのサービスを利用すれば、例えば、ある年商30億円、従業員数50人ほどの会社では、1万回を超えていた基幹システムへの手入力の作業が一括処理できるようになり、派遣社員を依頼する必要がなくなりました。別の年商10億円、従業員20人ほどの会社では、継続的に発生していた集計作業ミスに起因する納品数の間違いなどがなくなり、取引先からの信頼回復につながったといいます。

瀬戸氏は「機械にできることは機械にやらせてほしい。スタッフの方には、人間にしかできないこと、すなわちクリエイティブなPRや営業活動に取り組んでほしい」と話します。展示会開催に伴う負荷が軽減できれば、担当者は営業をフォローしたりプロモーション活動に専念したりが可能になります。「時間外労働などの問題で苦労している企業は少なくない。だが『どれだけスタッフが洋服好きであっても、そのままでは良くない』ということへの理解が高まっている」(瀬戸氏)ことがTERMINAL ORDERの利用率向上につながっているようです。

ベータ版を開発しながら営業するも連戦連敗

ターミナルが創業したのは2015年1月のこと。それから約半年をかけてTERMINAL ORDERを開発ししながら、「4~5枚の紙の資料を持って営業を始めた」(瀬戸氏)と言います。同年9月にベータ版が完成し、あるブランドの展示会で各社に利用をうながしました。しかし現実は厳しいものでした。いくら「紙やペンを使った受発注業務は不要ではないですか」と提案しても「それはなくせない」との返答ばかりで「連戦連敗だった」(同)のです。

同社の創業メンバーはそれまでインターネット事業で経験を積んできました。ただアパレル事業については「外から見て『こうしたほうが良いのではないか』と思ってはいたものの、商慣習の細かな所まで目が行き届いておらず利用者の満足を得られなかった」(瀬戸氏)のです。また発当初は「展示会をバーチャルで開催し、すべてをオンラインで解決しようとしているという誤解も受けた」(同)と言います。しかし瀬戸氏は「展示会は開催し、バイヤーも呼んでほしい。ブランドコンセプトはきちんと伝えるべき。だが無駄な業務をする必要はなり」というTERMINAL ORDERのコンセプトを訴え続けました。

最初の展示会で得たフィードバックを元にさらに半年をかけてシステムを改修。そこから、ようやく利用者が増えるようになりました。2017年2月時点の利用者数は「230ブランド、バイヤー数で7140人を超える」(瀬戸氏)までになりました。「時間こそが最も価値がある。売り上げ向上とスタッフの時間を生み出すための営業支援ツールとしての位置づけも理解されるようになった」(同)そうです。加えて、「コレクション系やストリート系、ガールズ系など様々なカテゴリーで利用されているほか、アパレルと同様の商習慣を持つB2Bブランド、例えば音響製品や菓子といったブランドでも使われている」(同)と言います。

現在、ターミナルがアプローチしている先は、「平たくいえば“イケてる”ブランド」(同)です。「ライバルのブランドが、どんなシステムを利用しているのかが重視されるため“イケてる”ブランドに使ってもらえれば評判が上がっていく」(同)のが、その理由です

FinTech領域への進出を計画、海外進出も視野に

利用者数拡大に伴い、ターミナルではブランドの新規取引の拡大につながる機会の創出に力を入れています。バイヤー向けに発行するメルマガでブランドを紹介したり、ソーシャルメディアからブランドページへ誘導したりです。これらの施策により「週に数十件の新たな取引申請が発生している」(瀬戸氏)のです。ただ新規の取引増は一概に良いことばかりではないようです。中小規模ブランドの中には大量の注文が入っても「商品を作るのに何千万円が必要なのに数百万円しか準備できず、受注を断るケースがある」(瀬戸氏)からです。

そこでターミナルでは、FinTech領域のサービスを2017年に投入したい考えです。具体的には、新規取引が発生した際の与信管理や請求業務の代行、製造のための資金需要に向けた融資サービスです。瀬戸氏は、「新規の取引申請が増えても売上向上につながらなければ、当社と利用企業はWin-Winの関係になれない」と言います。ターミナルが与信し、製造のための資金を貸し出すことで、商談増だけでなく実際の売上増まで支援するというわけです。

さらに海外進出も視野に入れます。米ニューヨークや仏パリ、香港や韓国などに拠点を置き、各地のショールームや合同展示会の主催者と提携することで、海外にある同種のサービスとも競争する考えです。同社がベンチマークしている海外のサービスは「JOOR」と「NuORDER」。瀬戸氏は「両サービスがアジアへいつ進出するかは常に意識している。ただ彼らが今、進出してきても対抗できるし、あるいは協業もできる」と見ています。

ブランドに貢献し続けることが継続性につながる

今後の注力点として瀬戸氏は、次の4点を挙げます。

●ファッション業界から他業界への水平展開
●上流から下流へのデータ活用
●トレンドデータを活用したマーケティング支援
●商品データを活用した未開拓のソーシャルコマース領域への進出

いずれも基本になるのは「利用者であるブランドをしっかりとサポートし続けていくこと」(瀬戸氏)です。それにより「TERMINAL ORDERを5年も10年も続く、ブランドビジネスの標準的な土台にしたい」(同)考えです。その時には、私たちが手にするファッションブランドや商品は、今よりもっと多彩になっているのかもしれません。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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