AIによる画像認識がテロを防ぐ!より高精度に、より高速に危険物を検知

2018.05.22
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ヨーロッパや中東、あるいはアジアでも、いわゆる“自爆テロ”事件が頻繁に発生するなど、世界情勢はとても不安定になっています。テロを防ぐためには、街中の監視なども重要ですが、爆弾などの危険物を検知する必要もあります。従来の目視チェックに代わり、危険物検知の分野にもAI(人工知能)をつかった画像認識技術が利用され始めています。興味深い製品を紹介しましょう。

自動車によるテロを走行中に検知するイスラエルのUVeye

テロの中でも脅威になっているのは、自動車に爆弾を搭載してのテロです。自動車を使ったテロは、2017年だけでも20件発生しています。この自動車テロを防ぐ技術をイスラエルのスタートアップ企業であるUVeyeが開発しました。

これまで、車両に爆弾が取り付けられていないかどうかは、警備担当スタッフが車両を停止させ、ポールの先に取り付けた鏡で車両の下を確認するという方法が一般的でした。アクション映画などで良く見られる、あの方法です。ただ鏡によるチェックでは、目視できる範囲が限られるほか、入念に調べようとすれば、それなりの時間がかかります。映画などでは、こうした弱点を突いて、検問を突破するような場面が少なくありませんよね。

さらに、警備スタッフによる検査は車両に近づかねばならず、もし本当に爆弾が搭載されていれば、スタッフの人命が危険にさらされるといった大きな課題を抱えています。できれば無人で、しかも高速に爆弾搭載の有無をチェックしたいところです。

そこでUVeyeが開発したのが、車体の裏側から車両をカメラで撮影して作成する3 D(3次元)モデルをAIで分析することで、爆弾などの危険物を搭載していないかをチェックする仕組みです。2輪のオートバイからフルサイズのトレーラーまで、ほぼすべての車両を対象に、時速45キロメートルで走る車両までを検査できるとしています。

爆弾を検知するプロセスは、こうです。道路に埋め込む形で設置するカメラモジュールは、複数の高解像度カメラを搭載しています。カメラモジュールは駐車場の入口や高速道路のゲートに設置し、その上を車両が通過するたびに撮影し、3D画像を生成します。

その3D画像を機械学習アルゴリズムでスキャンします。このアルゴリズムは、改造などが施されていない車両の標準的な構成と3D画像を比較することで、車体に隠された爆弾や武器などを検出し、疑わしい物体があれば警備担当者にアラームを発したり、ゲートを通過できないようにしたりするのです(動画1)。

動画:イスラエルのUVeyeが開発した爆弾など危険物検知の仕組み(1分4秒)

UVeyeのカメラモジュールには、据置型とモバイル型の2つがあります。据置型は高速道路のゲートなどに設置するための製品。モバイル型はイベント会場など、不定期に大勢の人が集まるような場所に臨時に設置するための製品です。

なおUVeyeは、この仕組みを危険物検知の仕組みとしてだけでなく、カーシェアリングなど不特定多数が利用する車両における損傷カ所の検知や、車両整備時の不具合カ所の発見などの用途にも提供しています。

人が身につけた爆弾を透視する米のEvolv Edge

テロの手段は自動車だけではありません。商業施設やスタジアムなど不特定多数の人々が集まる場所を狙ったテロでは、衣服の下に爆弾や銃器を潜ませています。最近は、一般的な金属探知機では検知できない非金属の爆弾や銃器もあり、テロリストはそれらを内蔵したベストを着用していることがあるそうです。それらの検知・排除は容易ではありません。

こうした人が持ち込むタイプのテロを防ごうと米Evolv Technologyが開発したのが「Evolv Edge」というボディスキャニングシステムです。検査用ゲートからミリ波という電波を人に照射し、跳ね返ってきた電波エネルギーを測定することで、隠し持った危険物などを映像化します(動画2)。

Introducing Evolv Edge in 60 Seconds from Evolv Technology on Vimeo.
動画2:「Evolv Edge」の特徴を紹介するビデオ(1分1秒)

ボディスキャニングシステム自体は複数社が提供していますが、Evolv Edgeは次のような特徴を持っています。

1つは、脅威の検知にAIを活用することで、高精度の画像をそのまま利用できることです。多くのボディスキャニングシステムは、肉眼では分からない危険物などを撮影するにとどまり、その判断は検査官による目視に委ねています。ところが、高精度の画像は実は裸体そのものと同等のため、プライバシーへの配慮から画像をわざわざ、ぼやかすして検査官が見るディスプレイに表示しているのです。AIで検知し人の介在をなくすることで、高精細の画像による判断を実現しています。

2点目は、ボディスキャニングの速さです。一般的なボディスキャニングシステムでは、検査用ゲートで立ち止まったり、あるいはゆっくりと歩いたりしなければなりません。Evolv Edgeでは、普通の速さで歩いても検査が可能です。同社によれば、Evolv Edgeが検査できる人数は1時間当たり600人。多くの人が集まる場所でも長い行列を作ることなく、危険物の検査ができるというわけです。

もう1つの特徴は設置が簡単なこと。小型・軽量なため30分程度で設置できるとしています。これも、イベント会場などをテロの脅威から守るためには重要な要件だといえるでしょう。

Evolv Technologyは、Evolv Edgeのほかに、複数の画像認識システムを組み合わせて、イベント会場の周辺を含めて安全性を確保するためのソリューションを提供しています。

東京オリンピック開催でテロのリスクは高まる

いかがだったでしょうか。AIを使った画像認識は今、急速に進化しており、さまざまな分野への適用が始まっています。日本では、まだピンと来ないテロ事件ですが、こうした脅威を排除するために、AIによる画像認識を研究・開発しているスタートアップ企業も少なくありません。同じ画像認識でも、その精度や速度などを高められれば、適用範囲はさらに広がるのかもしれません。

折しも2020年には東京で、オリンピック/パラリンピックが開催されます。世界中が注目する一大イベントだけに、テロのターゲットになる可能性は否定できません(関連記事『2020年の東京オリンピックの安全を守れ! セコムとALSOKが備える次世代警備の姿』)。UVeyeやEvolv Edgeがあれば、テロの脅威も排除できそですが、危険物を検知する機会自体がないことを期待したいものです。

執筆者:池浦 正明(Digital Innovation Lab)、小林 秀雄(ITジャーナリスト)

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