米国ITトレンドで見通すデジタルな近未来

米国ITトレンドで見通す デジタルな近未来【後編】

2015.06.30
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多くの企業がGoogleと同じコンピューティング・パワーを求め、手にする

本稿では、調査会社ガートナーが例年まとめた「2015年の戦略的テクノロジ・トレンドトップ10」を題材に、デジタル技術の次世代トレンドはどんなものか、それが企業にとってどんな意味を持つかについて前後編の2回に分けて考察しています。後編である今回は、前回言及していないトレンドについて、一挙に見ていきます。

進む「SDx」の世界

後編でフォーカスを絞るガートナーの「2015年の戦略的テクノロジ・トレンド トップ10」は、以下の5つです。

① クラウド/クライアント・コンピューティング(Cloud/Client Computing)
② ソフトウェア定義のアプリケーション/インフラストラクチャ(Software-Defined Applications and Infrastructure)
③ WebスケールIT(Web-Scale IT)
④ リスク・ベース・セキュリティ/セルフプロテクション(Risk-Based Security and Self-Protection)
⑤ 3Dプリンティング

上記「①」~「③」のトレンドは、ITインフラ/プラットフォームの革新にフォーカスを当てたものです。まず「①クラウド/クライアント・コンピューティング」が意味することは容易に推測できるでしょう。情報システムの多くがクラウドへと移行し、社内外のクライアント・デバイスに向けたアプリケーションが、クラウドをベースに構築されるようになるということです。これは、仮想デスクトップ・インフラストラクチャ(VDI)の(サーバサイドの)環境が、そっくりクラウドに移行したかたちと言えるかもしれませんし、メインフレームとダム端末から成るシステムの進化形とも見なせます。

②のトレンドは、「SDx(Software-Defined x)」の潮流が一層進み、ITインフラを構成するあらゆる要素が「ソフトウェア定義(Software-Defined)」で制御されるようになることを意味します。それにより、「コンピューティング・モデルを静的なモデルから動的なモデルへとシフトさせ、変化に対するITの俊敏性を高める」ことが可能になるからです。「ソフトウェアを通じて、必要なすべての要素をネットワークから動的に組み立て、設定できるルールとモデル、コードが必要になる」とガートナーは指摘します。日本でも注目度は大きく、市場規模は2019 年までに1800 億円になると、調査会社のIDC ジャパンは見ています。(図1参照)

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図1:国内SDIエコシステム市場の推移、2013年~2019年予測
(出典:IDCジャパン「2015年国内Software-Defined Infrastructure(SDI)エコシステム市場動向分析」)

このトレンドが向かうもう1つの方向性として、ガートナーが挙げているのが、③の「WebスケールIT」です。「Software-Defined」の流れの中で、ITのユーザー企業(のIT組織)も大手クラウド・プロバイダーと同様のコンピューティング・モデルを指向するようになるという見立てです。この点について、ガートナーは以下のような説明を加えています。

「今後、多くの企業・組織がAmazonやGoogle、Facebookのような大手Web企業と同じように考え、行動し、アプリケーションとインフラストラクチャを構築するようになる。これは、クラウド向けに最適化されたソフトウェア定義型のアプローチが主流となる中で進化・発展していくトレンドだ」。現在のところはAmazonやGoogleのITと、一般企業のITは大きく異なっています。それは今の話であって、将来はそうではないよ、というわけです。企業ITの責任者、担当者の方には興味深い話ではないでしょうか。

もう少し先を見据えると

ところで、上記②と③のトレンドについて考えを巡らせていると、ITインフラに関する、さらなる変化が見えてきます。1つは、ソフトウェアとハードウェアの分離によって、それぞれのライフサイクルに独立性が確保されることです。ユーザー企業は、ITインフラのライフサイクルに煩わされることなく、ビジネス要求とアプリケーション/サービス/データのライフサイクルをコントロールすることが可能になるはずです。

またクラウド・インフラ間でのアプリケーションやデータのポータビリティがより完全なかたちで確保されれば、ユーザーの自由度はさらに増すでしょう。現在、アプリケーションの稼働環境をカプセル化して、動作させる軽量コンテナ「Docker」が注目を集めていますが、この技術のように、少ない手間でアプリケーションを多種多様なインフラ上で動作させ、そのライフサイクルを他から分離させることができる技術は、企業ITのクラウド移行が進む中で、ますます存在感を増してくると予想されます。

さらに、「Software-Defined」の流れが進展すれば、データセンターのコモディティ化がハイスピードで進展し、データセンターがクラウド・サービス・プロバイダーの差別化の源泉ではなくなる可能性もあります。データセンター全体を1つのコンピュータと見なせば、コモディティ化は自然な成り行きと言えますが、仮に、そうなればGoogleなども、データセンターを自前で持たなくなるかもしれません(実際、そう予測する有識者もいます)。

さらに現在、クラウド化の流れの中で、世界各所に多数のデータセンターが設置されていますが、コンピューティング・アーキテクチャは、集中と分散を(螺旋階段を登るかのごとく)繰り返してきた経緯があります。加えて、コンピューティング・パワーとネットワークの性能がこれからも加速度的に伸びていくことを併せて考えれば、データセンターも「Software-Defined」、あるいは仮想化の流れの中で、サーバ・ハードウェアと同様に集中化・集約化へと向かっていき、その次の段階で、今とはまったく異なる形態の分散化フェーズに突入する可能性も大です。

この段階になれば、ITのユーザー企業にとっては、ITインフラのアーキテクチャがどうあろうと、まったく関係のない話になっているかもしれません。というわけで大切なのは、こうした技術トレンドを読みつつ、投資、技術採用の意思決定をすること。クラウドを含めた現在のITインフラは、まだまだ変化・進化する可能性が高いのです。

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