自販機がスマホアプリと連携、飲料メーカーが競う顧客獲得の“あの手この手”

2017.04.27
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「自販機大国」と呼ばれるほど、私たちの身の周りには自動販売機が多数、設置されています。中でも目に付くのが飲み物を販売するためのもの。街角や駅のホーム、ビルの中など、飲料を買えない場所はないくらいです。その自販機が今、スマートフォン用アプリケーションと連携し、購入者に向けて種々のサービスを提供し始めています。飲料メーカー各社は新サービスによる顧客獲得策を競っています。

「LINE」との連携で購入者の友達にもつながる:キリン

キリングループで清涼飲料水の自販機ビジネスを手がけるキリンビバレッジバリューベンダーが2017年4月13日、最新機能「Tappiness(タピネス)」を備えた自販機の設置を始めました。スマートフォン用のコミュニケーションツールとして多くのユーザーが利用する「LINE」と連携し、LINEの“友だち”とつながる機能を生かしているのと、キリン専用のスマホアプリが不要なことが特徴です。まずは首都圏と近畿圏から設置し、2017年夏から全国展開することで、1年間で2万台を設置する計画です。

Tappiness機能を持つ自販機で飲料を購入すると「ドリンクポイント」が受け取れます。所有するスマホのBluetooth通信機能を有効にすれば、自販機にスマホをかざすだけでポイントが貯まっていきます。ドリンクポイントは飲料1本につき1ポイント獲得でき、15ポイントで飲料1本と無料で交換できる特典チケットが受け取れます(動画1)。

動画1:「Tappiness」のポイント制度を紹介するビデオ

この特典チケットは、LINEの「トーク機能」を使って“友だち”にプレゼントができます。特典チケットを受け取った“友だち”は、その特典チケットをTappiness対応自販機にかざせば飲料を受け取れます。また飲料の代金支払いには、LINEの決済サービス「LINE Pay」が利用できます。LINE Payは“友だち”に安全に送金する機能などを提供しており、「飲み物がほしいけど現金がない」というときにLINE Payで支払いが完了することになります。

キリンの自販機とLINEの連携は、これが初めてではありません。2015年10月から設置している自販機では、LINEユーザー向けに「自撮り写真」を提供しています。飲料を購入すると、自販機に備え付けられたカメラで自身を撮影でき、キャラクターなどが描かれたデザインフレームを重ねた形で受け取れるというものです。公表されているLINEの月間アクティブユーザー数は2017年1月末時点で6600万人を超えています。キリンは今後も、LINE連携による新たなサービスの提供を予定します。

電車に乗ってる間に購入し降りたホームで受け取る:JR東日本

JR東日本グループで駅ナカを中心に自販機ビジネスを手がけるJR東日本ウォータービジネスも、最新の「イノベーション自販機」を2017年3月から設置を始めました。2017年4月時点では、都心部の池袋、品川、新宿、東京の各駅にそれぞれ2台、上野と大崎の両駅にそれぞれ1台の合計10台が稼働しています。イノベーション自販機は、デジタルサイネージとタッチパネルを搭載し、専用のスマホアプリ「acure pass(アキュアパス)」によって新たなサービスを提供しています。

acure passで、JR東日本ならではと言えそうな機能が、オンラインで商品を購入できるというもの。例えば、電車に乗っている間にacure passで商品を選択し、Suicaなどの交通系電子マネー、あるいはクレジットカードで支払いまでを済ませます。そして目的の駅に着いたら、acure passに表示されるQRコードを自販機にかざせば商品を受け取れます。毎日同じ商品を購入する人に向けた「まとめ買い」機能もあります。acure passでまとめ買いしておけば、自販機にスマホをかざすだけで商品を受け取れます。まとめ買いでは、割引サービスが受けられます(動画2)。

動画2:「acure pass」で利用できる機能を紹介するビデオ

キリンのTapppinessと同じように、acure passで購入した飲料を友人や知人にプレゼントすることも可能です。商品の受け取りに必要なQRコードを表示させるURLを、LINEやFacebookメッセンジャーなどで送れば、それを受け取った人は料金を支払うことなく自販機で商品を受け取れます。商品購入時にポイントを受け取れるサービスもあり、ポイントが貯まれば飲料と交換できます。

JR東日本ウォータービジネスはこれまでも、他社とは異なる自販機を開発し設置してきました。その1つが「Suica電子マネー専用自販機」。現金を受け付けず、Suicaなど交通系電子マネーでしか購入できませんが、一般の自販機より5円安い価格で購入できます。JR東日本の都内45の駅に置かれています。自販機の前に立った人の年代や性別を認識し、その人に合うであろう飲料を勧める「次世代自販機」もあります。こちらはJR東日本のおよそ200の駅で見られます。

健康を押し出し歩いた人にポイントを提供:サントリー

キリンやJR東日本のサービスは個人を対象にしていますが、サントリーグループで清涼飲料水の販売を手がけるサントリー食品インターナショナルは、オフィスへの自販機設置を狙ったサービスを提供しています。自販機用スマホアプリを使ったポイントプログラム「サントリー GREEN+(グリーンプラス)」が、それで、社員らの“健康”を前面に押し出しているのが特徴です。

GREEN+でも、飲料を購入するとポイントを獲得できる点は他社のサービスと変わりません。ですがGREEN+では、専用アプリをインストールしたスマホを持って歩けば、それだけでポイントが貯まるのです(動画3)。このサービスは、オフィスや事業所内に置く自販機に向けて提供しており、そこで働く社員らの「健康増進意欲の向上」を後押ししています。歩けば飲料と交換できるポイントが得られることで「もっと歩こう」と思わせるのが狙いです。

動画3:「サントリー GREEN+」の機能を紹介するビデオ

ポイント交換で提供する飲料も“健康”を意識したものになっています。「伊右衛門 特茶」「黒烏龍茶」「胡麻麦茶」「ボス グリーン」など、特定健康用食品(トクホ)の指定を受けた商品に限って提供しています。歩いて健康になり、貯まったポイントで受け取ったトクホ飲料で、さらに健康になるという循環を生みだせる点をアピールし、企業の採用をうながそうというわけです。

もはやポイント付与は当たり前、飲料以外への交換も

自販機と連携するスマホアプリは、上述したように、既に複数の飲料メーカーが投入しています。いずれも、商品の購入数あるいは購入額によってポイントを提供し、一定数が貯まれば飲料と交換するのが基本ですが、飲料以外の商品やサービスとの交換を可能にする動きもあります。その1つが、日本コカ・コーラが2016年11月から提供している楽曲のプレイリスト提供サービス「Coke ONミュージック」です。

Coke ONミュージックは、コカ・コーラの独自スマホアプリ「Coke ON」のサービスの1つで、音楽ストリーミング配信サービスの「Spotify」との提携で提供されています。コカ・コーラの商品ブランド別や、ドライブ中といった状況、および時間帯に応じて、お薦めのプレイリストが提供され、リストにある曲は30秒間試聴できます。Spotifyのアプリをダウンロードすれば曲をフルに再生できます。例えば缶コーヒーの購入者なら「コーヒー片手に息抜きしながら聴きたいプレイリスト」を、お茶の購入者なら「心の底から安らぎを感じるプレイリスト」といった具合です(図1)。


図1:「Coke ONミュージック」のプレイリストの例。時間帯で変化する(日本コカ・コーラのスマホアプリ「Coke ON」より)

ポイントに当たりくじの要素を組み合わせたのがダイドードリンコです。スマホアプリ「DyDo Smile STAND」の対応自販機では、購入金額と同じ数のポイントをもらえます。貯めたポイントは、「楽天スーパーポイント」や「LINEギフトコード」など、飲料以外の購入に利用できるポイントに交換できるほか、「Smile SLOT」というスロットくじに挑戦することができます。

Smile SLOTでは、1カ月間の獲得ポイントが多ければ、より高いランクのくじに挑戦できます。5段階あるランクのうち、5000ポイントで挑戦できる最上位の「ダイヤモンドランク」では豪華クルージングといった景品が当たります(図2)。ダイドードリンコは以前から「当たり付き自販機」を展開してきました。飲料を購入すると投入金額の表示部がスロットマシンのように動き、4ケタの数字が揃ったら1本無料でプレゼントするというものです。Smile SLOTは、スマートフォンを利用した当たり付き自販機だとも言えるでしょう。


図2:「DyDo Smile STAND」の画面例(ダイドードリンコのニュースリリースより)

まだまだある自販機に人を集める“あの手この手”

ポイントという手法ではなくスマホの利用者を自販機の前まで誘導する施策を打つ飲料メーカーもあります。例えば伊藤園は、2016年に一大ブームを巻き起こしたスマホ向けゲーム「Pokémon GO」と連携する自販機の設置を進めています。ゲーム内でゲームのプレーヤーが集まる「ポケストップ」や「ジム」という場所として自販機が機能するようにしています。アサヒ飲料は自販機に無料で使える無線LANのアクセスポイントの機能を持たせています。いずれも飲料の購入に直接つながる機能ではありませんが、自販機の前まで人を集めるという効果が期待できます。

アサヒ飲料はさらに、訪日外国人と音声で会話できる自販機の実証実験を始めています。英語で話しかけると、自販機が適切な回答を音声で返すというもので、クラウドの音声認識サービスを使って、アサヒグループホールディングスや野村総合研究所と共同開発しました。クラウドに送られた音声を音声認識でテキストに変換し、そのテキストを解釈し意味をつかんだ後に、適切な回答を自販機に返せば、自販機がその音声を再生するという仕組みです。この自販機は、お勧めの商品を提示したりもするそうです。

自販機とスマートフォンの連携は最早、当たり前になってきましたし、自販機に画像認識や音声認識、自然言語処理といったテクノロジーの適用も進んでいるようです。支払い方法も今後は変化していくかしれません。自販機が今後、どのような進化を見せるのか楽しみです。

執筆者:古川 達也(Digital Innovation Lab)、笹田 仁(ITジャーナリスト)

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