VRはゲームだけじゃない、簡易ビューワー「ハコスコ」などで広がる応用範囲

2017.06.08
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

VR(Virtual Reality:仮想現実)への期待が改めて高まっています。2016年には東京・渋谷にVRを使ったエンタテインメント施設がオープンするなど、ゲーム分野を中心に一般消費者向けのサービスが特に話題を呼んでいます。一方で、VRをビジネス分野に利用する動きもあります。なかでも「ハコスコ」と呼ばれる段ボール製のゴーグルなどを利用することで、マーケティング用途での利用が広がっています。

ゴツいヘッドマウントディスプレーは必ずしも必要ない

VRは、デジタル技術によって作成した人工の環境を、あたかも現実の世界のように人に体験してもらうための仕組みです。両眼を覆うように被る大型のヘッドマウントディスプレー(HMD)や専用のグローブなどを装着することで、視覚や聴覚に加え、触覚などにも刺激することができます。ゴツいHMDをかぶり、大げさに驚いているようなVR体験者の姿をテレビなどで見た読者も少なくないでしょう。どんな画像を見ているのか外からは分からないだけに、その姿は少し滑稽に映るかもしれません。

テレビなどで紹介されるVRの利用例の多くがゲームなどエンタテインメントが中心ですし、ゲーム機メーカーが専用のHMDを投入したりしています。そうしたHMDは数万円を超えることが珍しくなく、それほど簡単には体験できないのも事実です。

一方で、スマホに映る画像を見るための安価なゴーグルが、いくつか販売されています。その代表例が、ハコスコが提供する段ボール製のゴーグル「ハコスコ」です。1000円程度で販売されており、段ボールを折り曲げた中に自分のスマホを装着してVRを体験します。ハコスコでは、この段ボールを独自にデザインできるサービスを展開しており、企業がマーケティング活動の一環として利用したり、イベントのノベルティとして配布したりする例が増えています。そうした中から、ビジネス用途での利用例をいくつか紹介しましょう。

不動産の内見からリフォーム後の確認までが可能に

VRが有効と見られる分野の1つが、不動産の内見です。売買・賃貸を問わず、物件を選ぶ際には部屋の様子を実際に確認するのが普通です。しかし、物件の所有者や不動産会社の担当者などと現地を訪問する日時を調整しなければなりませんし、進学や就職などで遠方に物件を捜す際には時間調整すら難しいかもしれません。さらに中古物件ともなると、リフォームが終わっていればまだしも、リフォーム前であれば完成後の姿は想像するしかありません。

そうした中、大京グループで不動産流通事業を手掛ける大京穴吹不動産が、「バーチャルリフォームルーム」と呼ぶサービスを2017年2月から提供しています。グループ会社の大京リフォーム・デザインと組み、リフォーム後の室内の様子をCG(コンピューターグラフィック)画像で作成。物件の購入希望者は、WebサイトにスマホでアクセスしVRゴーグルを装着すれば、その部屋を訪れて見学している感覚で、リフォーム完成後の室内を360度全方向自由に確認できます。Webサイトには、リフォーム概算費用やローン利用時の支払額、設計者によるリフォームのポイント解説なども掲示されています。

バーチャルリフォームルームの実現に向けては、大京穴吹不動産は、リフォーム物件のVR体験の仕組みを専門に手がけるベンチャー企業、中古ミテクレと提携。基本的に中古ミテクレの仕組みを利用しています(動画1)。

動画1:中古ミテクレの仕組みを紹介するビデオ

大京穴吹不動産がVRを利用するのは、これが初めてではありません。2016年5月から、不動産物件の内見をVRで可能にする「ぐるっとネットdeオープンルーム VR」を提供しています。同社ホームページにある取り扱い物件を360度のパノラマ画像で閲覧できる「ぐるっとネットdeオープンルーム」の一部をVR対応にしたものです。対応物件数はサービス開始時で900件弱でした。

地方創生にもVRが一役

VRが持つ「離れた場所を疑似体験する」という機能に対し、地方創生や、ふるさと納税に取り組む地方自治体などの期待が高まっています。「あわじ国」を名乗る兵庫県南あわじ市も、その1例です。「あわじ国バーチャン・リアリティ」というサイトを通して、食の疑似体験をVRで提供しています。

「食がはぐくむ ふれあい共生の都市(まち)」を将来像に掲げる南あわじ市がVRのテーマに選んだのは“食育”。1人で食事を済ませる「孤食」を問題意識に、故郷の手料理をご馳走になるという疑似体験を提供しています。おばあちゃんが作る「朝ごはん編」や、親戚家族とご馳走を囲んで団欒する「夜ごはん編」などがあります(動画2)。500年の歴史を持つ淡路人形芝居(淡路人形浄瑠璃)や、うずしおクルーズの体験も“おまけ”として用意されています。同サイトでは、ふるさと納税を受け付けており、その返礼品と共にオリジナルのハコスコを先着順でプレゼントもしています。

動画2:あわじ国バーチャン・リアリティの「朝ごはん編」

地方自治体によるVR活用では、北海道美唄市が2015年に国内初の自治体VRアプリ「VR観光体験 ~北海道美唄市~」を発表し話題になりました。

360度の全方位コンテンツの制作も容易に

VRの利用における課題の1つが、360度の全方位を移す画像の作成です。ただ、それも最近は、360度撮影に対応したカメラなどの登場で作成が容易になってきました。例えば、リコーの360度対応カメラ「THETA(シータ)」では、画像の編集や配信用のアプリケーションがPC用とスマホ用に用意されています(動画3)。

動画3:「THETA(シータ)」の紹介ビデオ

リコーでは、撮影した画像を公開するためのクラウドサービス「THETA 360.biz」も提供しています。THETA 360.bizでは、撮影した画像をクラウドに保存すれば、それをWebサイトに埋め込むためのHTMLコードが生成されます。不動産物件については、コンテンツの制作を受託するサービスも用意しています。

VRはおよそ2人に1人が知っている

高精細なVRは医療分野などで利用されています。一方で、今回紹介したような消費者向けのVR関連商品のビジネス利用も広がり始めました。不動産や観光の分野では特に、2020年のオリンピック/パラリンピックを前に、海外からの投資や観光客誘致といった用途にも期待が高まっています。実際、大京グループは台湾や香港に持つ現地事務所を訪れた顧客にVRを使った物件の内見により、実際に日本を訪れずに契約に結び付けようとしています。

2017年始めにMM総研が発表した『AR(拡張現実、Augmented Reality)とVR(仮想現実、Virtual Reality)における一般消費者の利用実態および市場規模に関する調査結果』によれば、ARの認知度が30.9%、VRの認知度は、それを上回る47.5%でした。ARはおよそ3人に1人、VRはおよそ2人に1人が知っているわけです。ゲームなどのエンタテイメント用途を想像してしまいがちなVRですが、こうした認知度を背景にすれば、ビジネス分野での面白い利用方法が見つかるかもしれません。

執筆者:臼井 雅裕/中村 亮太(Digital Innovation Lab)、高橋ちさ(ジャーナリスト)

EVENTイベント